交通事故は年間100万件近い件数が発生していますが、意外に知られていないのがその3割程度が労災事故という事です。交通事故が発生した際に問題になるのは、交通事故の被害者に対する補償の問題です。交通事故にも物損事故と人身事故と言った事故類型の違いがありますが、問題となるのが、相手がいる交通事故の場合は、第三者行為災害に該当するとともに、更に交通事故の被害者側には民法に規定される不法行為責任に基づく損害賠償請求権が発生するので、労災保険給付を請求してしまった場合、両方の保険を使用してしまう危険性があり、その支給調整が問題となります。
このような場合は、自賠責保険等から交通事故の被害者に対する補償がなされた際には、労災保険が不支給扱いされ、その逆に労災保険によって補償がなされた場合は、自賠責保険などに対して損害補償を請求することが出来なくなります。それでは、自賠責保険と労災保険のどちらが優先して支給されるのかという事が問題になりますが、特別な規定はありません。
ですから、交通事故で治療を受ける場合、労災保険と自賠責保険のどちらを使うかを自由に決定する権利が有りますが、被災した場合、ケガの治療でどちらの保険を使えばいいのかというと、通常は自賠責保険先行で問題はありませんが
・ 交通事故に対して自分の過失割合がかなり大きい場合
・ 交通事故の過失割合について相手と揉めている場合
・ 交通事故の相手が無保険又は自賠責保険しか加入していない場合
といった場合には、労災保険を先に使用すべきです。
また、交通事故の加害者が自賠責保険しか加入していない場合は、自賠責保険は傷害に対しては120万円、後遺障害・死亡に対しては3,000万円までという支給に対する限度額があります。
また、休業損害補償については、自賠責保険の場合は、1日当たり19,000円という支給額の上限がありますが、過去3ヶ月間の平均賃金の全額の支給を受ける事が可能です。他方、労災保険は過去3ヶ月間の平均賃金の8割、健康保険の場合は最長1年6ヶ月間という支給期間付きで、標準報酬日額の6割相当額の支給を受ける事ができます。
これらの労災、休業補償という問題については、一般人にはなじみが少ない問題であり、弁護士といった法律の専門家とともに処理をしていくことがトラブル防止につながると言えます。