入通院慰謝料は傷害慰謝料とも呼ばれますが、交通事故によって医療機関に入院や通院せざるを得なくなったことで生じた精神的苦痛に対する損害賠償です。精神的苦痛に対する損害賠償ですから、治療費や入通院にかかった実費などは含まれません。それらは示談金に含まれる項目ということになります。
精神的苦痛を金額として算定するということになりますから、交通事故の被害者ごとに精神的苦痛というものはまったく違いますし、その苦痛を計算するなどということは本来は不可能なことです。しかし、一定の基準がなければ交通事故の被害者の救済が図れませんから、慰謝料を算定するための次のような基準が設けられています。
・自賠責基準
・任意保険基準
・裁判所基準(弁護士基準)
交通事故の慰謝料を算定するためには、このような3つの基準があるのですが、それぞれの基準により慰謝料の計算方法に違いがあるため、慰謝料の金額に差があるということに注意が必要です。
「自賠責基準」は、「自動車損害賠償保障法」により、すべての自動車運転者の加入が義務づけられている自賠責保険による基準です。すべての運転者に加入を義務づけていることからわかるように、最低限の保障をするのが目的でもありますから、3つの基準の中では、慰謝料の額はもっとも低くなっています。
自賠責基準での慰謝料は、次の計算式になります。
1日当たり4,200円 × (実通院日数 × 2) = 自賠責基準の入通院慰謝料
ただし、(実通院日数 × 2)が、治療期間の合計日数より多い場合は、治療期間の合計日数で計算します。
どちらか少ない方の数値で計算するということです。
この自賠責基準は、保険会社が被害者に支払う総支払い額が120万円を超えない場合に限り採用されます。総支払い額というのは、入通院慰謝料、治療費、休業損害、通院費などすべての金額です。この総支払い額が120万円を超える場合、保険会社は、次の任意保険基準に基づいて慰謝料を算定することになります。
「任意保険基準」は、任意保険会社ごとに設定している慰謝料の基準なので、その計算式等は公表されていませんが、ある程度の目安となる表や計算式などは、交通事故案件の経験のある弁護士であれば把握しています。
任意基準の慰謝料算定では、1ヶ月を30日で計算します。症状や通院日数、その他の事情などによって慰謝料が増減されますが、おおよそ、自賠責基準と、次にあげる裁判所基準(弁護士基準)の間をとるような慰謝料額と考えてよいでしょう。
弁護士が保険会社と交渉する際には、次の裁判所基準(弁護士基準)で計算した金額を請求することが主になります。
「裁判所基準(弁護士基準)」も公表はされていませんが、いわゆる「青本(交通事故損害額算定基準)」や「赤い本(民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準)」といわれているものがあり、これまでの裁判例などから算出された慰謝料が基準とされています。3つの基準の中では、もっとも高額な慰謝料額になっています。
3つのうちのどの基準においても、あくまで基準ですので、そのまま認められるということではありませんから、目安としてとらえておくとよいでしょう。
神戸ライズ法律事務所は、地元神戸に密着した弁護士による地域密着型の法律事務所です。神戸を中心に、幅広いエリア、幅広い分野の法律相談に、実績豊富な弁護士が対応致します。